シンガポール:上場会社による気候関連情報報告義務の開始
シンガポールは、持続可能な発展を推進するため、「シンガポール・グリーンプラン2030」を策定し、環境に優しいエネルギーの利用やグリーンエコノミーの創出など、包括的な環境目標を掲げています。 この一環として、2025年からシンガポールの全上場企業に対し、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の基準に沿った気候関連情報の開示が義務化されます。 2027年からは、年間売上高が10億シンガポール・ドル以上の大規模非上場企業にも同様の義務が適用される予定であり、将来的には対象範囲のさらなる拡大が検討されています。
留意点としては、企業の上場/非上場の別や売り上げ規模により、導入時期がそれぞれ異なる点です。また、上場企業は、2026年度から、大規模非上場企業は2029年から、スコープ3(サプライチェーン全体)の温室効果ガス(GHG)排出量の報告が義務付けられる予定です。さらに、スコープ1(自社の直接排出)およびスコープ2(購入した電力などの間接排出)のGHG情報の外部保証の実施義務は、上場企業は2027年度から、大規模非上場企業は2029年度から求められます。その他の企業については、シンガポール政府は上場企業および大規模非上場企業の経験を検討した上で、報告要件の適用を検討する予定です。
これらの規制は、企業に新たなコスト負担をもたらす一方、持続可能なビジネスモデルへの転換を促進する重要な契機ともなります。具体的な取り組み例として、以下が挙げられます。
サステナビリティレポートの作成:気候リスクと対応策を明記した詳細なレポートを作成することで、投資家や顧客に対して透明性の向上を推進します。
炭素税の導入:シンガポールは2019年から東南アジア初の炭素税を導入しており、2024年以降は段階的に税率が引き上げられる予定です。
グリーンビルディングの推進:新築ビルに対して厳しいエネルギー効率基準を設け、エネルギー管理システムの導入を促進します。
この取り組みは、企業が持続可能性に関する能力を強化し、グリーン転換を推進する政府の努力の一環です。国際的に認められた基準に基づく気候関連情報開示を通じて、自社のサステナビリティへの取り組みを明確に示すことができる企業は、新たな市場、顧客、資金調達へのアクセス向上の恩恵を受けることが期待されています。
<気候関連情報開示ロードマップ>