【シンガポール進出成功事例】BINAL Asia Pacific (SG) 青山社長 インタビュー
今回は輸出入通関業務ソリューションを提供するBINAL Asia Pacific (SG) 青山社長にインタビューさせて頂きました。シンガポール進出を成功させ、破竹の勢いで成長するBINAL社。その成功の秘密とは?
青山 慎司(BINAL Asia Pacific (SG) Pte Ltd 代表取締役)
1968年生まれ 岐阜県出身
貿易ソリューションを提供し20年。日本で数百のプロジェクトを成功に導いた実績をアジア圏に展開するため、2019年3月よりシンガポールに現地法人を設立。進出からわずか10か月で、シンガポール政府関連システム会社の日系唯一の事業パートナーとして選定されるなど、BINAL Asia Pacificのシンガポールの業務拡大において経営手腕を発揮している。
GPC内田(内)、バイナル青山様(青)
内:本日はよろしくお願いいたします。御社は去年の5月にシンガポールに本進出されてから、わずか10か月でシンガポール政府の関連会社の日系唯一の事業パートナーとして選定されるなど、大躍進されています。海外進出を考えている企業様にとって、必ずやヒントになる事があるかと思いますので、是非お話をお伺いさせてください。
— なぜシンガポールか
内:弊社とバイナルさんが初めてお付き合いをさせていただいたのは、御社のシンガポールでのセミナー集客サポートでした。なぜシンガポールを選ばれたのか、また、なぜセミナーから始めてみようと思われたのか、お聞かせいただけますか?
青:弊社は輸出入通関業務のソリューションを提供するパッケージシステムを作っている会社です。日本でナンバーワンの導入実績を誇っている会社なんですが、色々なお客様から、日本と海外のデータを繋げて、効率化を求めたいという声を常々聞いていました。その中で「シンガポール」というキーワードが結構出ていたこともあり、シンガポールと繋げるなら何よりまずは現地を知らないといけないと思いました。いきなり現地法人や支店を立ち上げるよりは、まずはシンガポールのマーケットを調査するという意味でセミナーをやってみようかな、という流れでしたね。
内:他のASEAN諸国ではなく、シンガポールだったのですね。
青:国際物流となると、基本的には製造の拠点となるタイやベトナムが物流のポイントになります。元々はそういったところの方がマーケットとしてニーズがあるのではと思っていたのですが、シンガポールはASEANのハブでもありますので、ここを起点として他のASEAN諸国にPRできるのではと思って進出しました。
— シンガポールでのマーケットリサーチ
内:それで実際セミナーを開催されて、手ごたえはどうでしたか。
青:最初は、どうやって案内を出していいのかも分からないままスタートしていって、日本からシンガポール日系企業様宛にダイレクトメールを出したんです。国際郵便で。ただ、なかなか集客がままならず、集客活動も実際に現地に行ってした方がいいなと思って、私がシンガポールに来ました。そこでGPCさんに出会い、ご相談して一緒に筋道を立てました。
それをもとに集客活動をしましたところ、70名ほどの方々にお集まりいただくことができたんです。
内:在シンガポール日系企業さんを70名も集めることができたんですね。実際にセミナーをされての印象や、そこから得られた事をどう次のアクションに繋げられたのでしょうか。
青:70名の来場があったということは、それなりに皆さん興味があるんだなと、最初のファーストインプレッションはそういう感じでしたね。
ただ、対日本の提案と、対シンガポールの提案というのは分けて考えなければいけないと思っていました。よって、セミナーにご来場頂いたお客様には、私共の既存システムを提案するというよりは、まずはヒアリングをして、今どういう所に困っているのか、日本との違いはなんなのか、そういったところをまず最初にしっかりお聞きしました。その中でシステム提案ができるところや、逆に言うと私共がそのお客様から教えていただいた事をシステムの中に反映していくような、相互のサポートができる体制にしていこうというイメージで、お話をお伺いしていましたね。
— シンガポール進出決定の決め手
内:セミナーでのマーケット調査後、御社は非常に短期間でシンガポールへの本格進出のご決定をされましたよね。
青:正直こんなに短時間で、シンガポールに進出するとは弊社の誰も思っていませんでした(笑)。
ただありがたいことに、先のセミナーで、新規のお客様が2社ほど導入を頂けるということになったんですね。システムというのは、導入するだけではなくて、トラブルがあった時にすぐに対応できるようなアフターサポートが重要なポイントになります。特に弊社の場合は業務システムなので、システムが止まってしまうということを絶対避けないと、いうところもありました。弊社のトップは非常に決断が早くてですね、ここはもういっそ現地に法人を立ち上げた方がいいという判断のもとで短期間での進出になりました。
内:精緻な売り上げ見込みを作り、精査し、修正し・・・という事に時間をかけるよりも、事実として新規のお客様へのサポートが必須であるという事と、現地調査の肌感として、今、需要がありそうだということをベースに、まずはやってみるという考えで本格進出された。そういうイメージでしょうか。
青:おっしゃる通りです。
(いつも元気をくれる青山社長)
— シンガポール政府系企業との事業提携に至るまで
内:シンガポールという慣れないビジネス環境の中で、新規のクライアントやパートナー開拓を進めるのは簡単なことではないと思います。そんな中、進出から10か月でGeTS社とのパートナーシップを締結されたというのは素晴らしいことだと思うのですが、どんな風に種まき・収穫をされたのでしょうか。
※GeTS Asia Pte Ltd:シンガポール政府系企業CrimsonLogic社傘下の通関情報システム会社。シンガポール及び相手国の通関に係る蓄積データ活用の提携先として、BINAL Asia Pacific (SG)社を日系唯一のパートナー企業として選定。
青:シンガポールは、特に貿易通関の部分でデジタライゼーションが活発に推移しており、様々なことをシームレスにやっていこうという動きが非常に速い国です。弊社のシンガポールのエンドユーザー様は規模の大きな会社様であるということで、乗り遅れてはいけないというのがありました。そういったところから、シンガポール系の税関システムを作っている会社であるGeTS社等とコンタクトを取るようになったのがきっかけです。
話をしていくうちに、これはおそらく多くのユーザー様にも同じような悩みがあるのではないかという事を思いました。GeTS社に私の方からアプローチして、先方も面白いねという感じで話を聞いていただく関係となり、それが今回の業務提携につながっていきました。日本にいる頃には全く想像していない形での発展だったので、ラッキーでしたね。
— シンガポール拠点の人選
内:御社のシンガポール拠点の最初の社長、そして1人目のメンバーとしてご赴任されましたが、青山さんの人選はどのような背景で?
青:私としては、海外のニーズも間違いなく弊社の製品にはあるんじゃないかと、漠然と思ってはいましたが、まさか私が今ここにいるとは夢にも思っていませんでした。
ただ、セミナーの際に現地の風に触れて刺激を受けたのと、様々なユーザー様からのご意見やアドバイスをいただいて、これであれば、私達が現地でお役に立てるんじゃないかと、ということを肌で感じました。それで自ら「私が行きます。」という風に宣言をして。そういういきさつです。どちらかというと私のわがままを会社が聞いてくれたということになるのかなと思います。
内:素晴らしいですね。その後、現在では3名のローカル社員の方を雇用するまでに成長されています。日系企業だとまずは最初に数人を日本人で固めるというのが多い中、なぜローカル社員の方の雇用を決められたのでしょうか。
青:確かに当初は、日系の企業様向けに私共の製品のソリューションをご提案しようという事で進出をしてきましたが、現地で色々と見ていく中で、日系だけでなくローカルの会社さんの方にも手を広げたいなと思うようになりました。日系の会社は私が対応できるので、シンガポールの会社にアプローチするなら、やはり現地のスタッフと一緒にやった方がスムーズに行くんじゃないか、というようなところから、まずはローカルスタッフの方の採用を考えました。
日本ではちょっと考えられないのですが、日本は営業職・プログラマーという形でカテゴリーに分けて採用しているのに対して、今回入ってきた3名のスタッフは、営業もやれるし開発もやれる、何でもやるというような人材だったんですよね。私共も所帯はそんなに大きくないですから、なんでもやってもらえるというのは非常にありがたいなと思って、採用することに至りました。
弊社のモットーとして「お客様ときちんと接してこそいいシステムが作れる」というのがあります。プログラマーも実際にお客様の声を聞いて、それをシステムに反映するというところが重要だと思っているので、彼らも私と一緒に外へ出て、お客さんとのミーティングも一緒にしながら、社内でテストだとかプログラミングだとかそういったことをやってくれています。非常に頼もしいです。
内:逆にローカル社員の方を採用されるにあたってご苦労された点はありますか?
青:そうですね・・・シンガポールは、時間になればもう仕事は終わりといような感じの割り切り方ですので、そこは戸惑ったという所ではあります。ただ、時間ばかりかけて長く仕事をしても効果は出ないので、限られた時間の中でいかに成果を出すかというようなことを今は教えています。
— 本社との関係構築
内:本社との連携の部分についてお伺いさせてください。こちらに現地法人を持つ日系企業様からは、本社とのコミュニケーションが上手くいかないとか、そこに時間が取られるといった悩みをお聞きします。御社のようにスピード感を持って事業を拡大されていらっしゃるような会社様は、本社との連携はどうされているのでしょうか。
青:一番難しいところではあります。やはり日本側からしてみても、シンガポール現地でどんな活動をしているのかを直接は見られない状態なので、いわゆる結果報告を定期的に行わないといけないというスタイルが一般的だと思うんです。弊社もまだまだ発展途上で、グループ全体で120人程度の所帯なのですが、そのあたりのコミュニケーションは全て日本のオーナーと直接会話をして済ませています。メリットは、とにかく決断が早い。何をするにも時間をかけることなく進んでいけますね。もちろんオーナーとの会話なので、緊張感が伴う場面もありますが、バランスを取りながら活動しているという感じですね。
内:緊張感は伴うものの、物事をスピーディーに進められて拡大も進むということですね。
青:そうですね。仕事をする上では、悶々として考えるよりも行動を起こした方が良いと思っています。良くても悪くても、やったことに対しての結果が伴いますので。そこに付随する喜びや悔しさが日々あった方が、人間らしいのではと思いますね。逆に言うと私は今、凄くやりやすく、いい環境で仕事をさせて貰ってます。
また、弊社の日本の社員はほぼ全員シンガポールに一回は来てくれています。会社の考え方で、外を見て外で学べということもあり、みんなでサポートしてもらっているなという気持ちはあります。
— 今後の展望
内:最後に、御社のこれからについてお伺いさせてください。
青:弊社はシステム会社ですので、どうしてもプログラム開発の人材が必要です。今シンガポールでのご契約を頂いたお客様に対しての開発は、日本本社の方で行っているのですが、私はシンガポールの中で開発からアフターサポートも全て行えるようにしていきたいと思っています。よって、開発できるスタッフをもっともっと増やしていきたい。そして、日本側の開発へのヘルプもできるようにしたいと思っています。日本側と海外側とで上手く分担して、メリットが出せるようにしていきたいですね。
当然そうなれば、シンガポールのマーケットだけではなくASEAN全体がターゲットとなりますね。まずはシンガポールで足固めをして、そこからASEANにどんどん展開していく。そういう計画があります。
内:日本とシンガポールが開発と営業のどちらの拠点でもあるという状態になって、人も頻繁に行き来しながら、アジア全域、ひいては世界全域に広げていかれるということですね。
青:やれればいいですね。
内:シンガポール進出を考えていらっしゃる日系企業さんにとって有意義な内容をたくさんお伺いできたと思います。ありがとうございました。
青:ありがとうございました。