【海外進出を現地に学ぶシリーズ・建設業界編】 DB&B Pte Ltd のBilly Siew氏, Jeanette Siewさんとの対談インタビュー


紹介

  • DB&B Pte Ltd(以下「DB&B」という)は、1996年に創業以来、オフィスのデザインや建築等、商業インテリアプロジェクトを専門に扱う企業である。シンガポールに拠点を置いており、近隣諸国6か所に支店を持ち300-400人の従業員を抱える。

  • Billy Siewは、創設者の1人であり、グループ取締役でもある。2006年に北京と上海で 起業し、同年フィリピンへと事業を拡大した。

  • 顧客数をどんどん増やし、アジアでの事業を急速に拡大していった。

  • Jeanette Siewは、シンガポールとタイを率いる常務取締役である。

  • Cynthia Loh is an assistant general manager, who has been with the company for 14 years, which is a reflection of the good culture of the company.

  • 多国籍企業の貴社は、かの有名なFortune 500 に名を連ねる大企業がクライエントの大多数を占めている。

  • 例として、貴社はShopeeの初シンガポールオフィスを手掛け、賞を受賞した。DB&Bは大勢のデザイナーやプロジェクトマネジャーがクライエントと密接に連携し、顧客のニーズやビジョンに合ったオフィスデザインを提案している。

  • インドや中国に事業拡大する上で、シンガポールは企業にとって、非常に良いプラットフォームであるとBilly氏は指摘している。

  • さらに、シンガポールの日本との関係もここ数十年の間に大きく発展し、シンガポールへ進出してくる日本企業が増えており、今後一緒に仕事をすることをの楽しみにしている。

  • シンガポールで貴社の仕事を身をもって体験したことがある外国人顧客は、大抵、近隣諸国の別の場所においても同様に、貴社に仕事を依頼するそうである。


Q1) DB&Bのバリュー・チェーン(価値連鎖)プロセスとは?

DB&Bは、デザインと建築両方に特化しており、ターンキーソリューションを提供している。特定の状況において、下請け事業を行うこともあるが、通常は全て貴社だけで行う。(建具等)

貴社は、2017年に、シンガポールに26000スクエアフィートの新しい工場に移設した。以前の工場の約2倍の規模である。これは、デザインと建築両方を手掛けるという貴社の強みを生かす為の重要な節目となった。また、自社工場を所有していることで、品質や費用をより管理しやすくなった。

さらに、貴社は生産性の改善を常に求めているため、最新の機械を所有している。これにより、肉体労働への依存度を最小にし、同業者に対して他にはない競争上の優位性を得る事ができる。

Q2) 異国の地で働く上で、最良のパートナーをどのように探したらよいか?

Billy氏にとって、パートナーとは、株主であり、同じバリューを持つ株主を求めている。

DB&Bが他国へ事業拡大する際、その国々の独自の文化に敬意を示し、順応することに努めている。しかし、企業の核となる専門性と基本原則を忘れてはならない。他国出身の人が新しく入社した場合、彼らも企業の中核的価値観と原則を守らなければならない。

Billyは、2001年以来企業の事業拡大の為、海外出張を繰り返してきた。そして学んだ事が、異なる文化を毅然と受け入れる事の重要性である。完ぺきな仕事への欲動を保ちつつ、異なる文化を受け入れるべきである。

Q3) シンガポールにおける才能のある若者達の現状をどう考えるか?どのようにして若者を引きつけ、育成するのか?この側面においてなにか傾向はあるのか?

24年前、DB&Bは、新設会社だったので、人材を集めるのに困難をきたした。最初のオフィスは、つつましやかな小さなものであった。.

どの世代においても有能な人材はいるとBilly氏は信じている。1980年代に生まれ、今後20-25年、シンガポールや世界でこの業界を動かすであろう人材を見てきている。

若い人材の雇用とは継承である。企業に共有の意思がある限り、常にそこには向学心のある若い人材がいる。こういった若い人材に経験や学びの機会を与える事は重要である。企業が若い人材のニーズに合わすことができるのであれば、彼らは喜んで、就職するだろう。

Billy氏は人口統計学を取り入れている。それぞれの年齢層の人々は、自身の唯一無二の技術や考えを持ち合わせていると氏は信じている。

そしてそれにより職にふさわしい社員に変える事ができる。限られた人材と高齢化社会により、ふさわしい若い人材を探すことは、いかなる業界においても課題であることが指摘されている。しかし、DB&Bは、的を絞った人口統計学により若い人材の雇用に成功している。

10年違いで生まれた人々は、それぞれの時代の産物であるため、世代が異なる。その世代の中で、規律と情熱両方を持ち合わせている人材を見つけ出すのは会社次第であるとBilly氏は述べた。

又、テクノロジーが急速に進歩しているため、未来(2050年)は活気に満ちた見通しであるとBilly氏は考える。

Q4) 若い世代に規律をしつけることができるか?

Billy氏は規律をしつけることはできると信じている。(兵役に参加することで)しかし、それをどの程度吸収できるかは人それぞれである。個人の内に秘める規律の度合いは育った環境や家族文化によって形成されると考える。

若い人材を保持する為に、企業は規律と面白さの良いバランスを提供しなければならない。今日の企業で言うと、オフィスデザインは伝統的なものから、より躍動的で面白いデザインへと進化している。これにより創造性と生産性を生み出し、若い人材の維持につながる。

Q5) 起業をしたきっかけは?

Billy氏は、常に起業家精神を持ち合わせていた。以前は空軍に所属しており、デザイン産業に関わったことは一度もなかった。しかし、氏は、この産業にとって最も必要不可欠な高い共感性を持ち合わせていた。その結果として、サービス産業の一部であるデザイン産業に参入することに決めた。

起業してから3年後、兄妹のJeanetteを会社に誘った。

特に商業オフィスデザインという仕事を選択したかについて言うと、新しい働き方の受け入れや、技術の進歩によりオフィスデザインへの需要が常に進化しているからである。

さらに、アジアは急成長経済圏の一つで、新企業や企業拡大の一定の流入がある。これにより、新しいオフィスデザインへの持続的な需要が生まれると考えたのだ。

オフィスのデザインプロジェクトは、家の改装に比べると大抵規模が大きく、更新度が高い。そしてBilly氏は、大手企業に焦点を絞ることに決めた。

シンガポール政府は、職を生み出す為の直接外国投資の誘致に成功した。同時に、他のアジアの国々では見られない、政府によるローカルSME(中小企業)に対するサポートが手厚い。

Q6) 新型コロナウイルスが商業オフィスデザイン産業に引き起こす影響とは?(特に多数の人が在宅ワークをしている中で)

Billy氏によると、従業員が仕事をしていて安全と感じられるような労働環境を模索しているという企業動向がみられる。

DB&Bは、この変革期に乗じて、自動ドア、顔認証、セーフディスタンスを保つレイアウト、簡単に掃除できるよう生地の代わりにビニールや皮の利用、ナノフィルム等新しい機能を顧客と協力して取り入れた。

Billy氏によると、何年も前からオフィスレンタル代を節約できるため、在宅ワークを実践している企業はある。しかし、注意散乱となる要素がある為、在宅ワークは依然として課題となっている。

結果として、新型コロナウィルスの影響で、今後色々な企業で導入される新しい勤務形態である。

さらに、都市計画の今後の見解として、水平方向での拡大を止め、代わりに垂直に成長をすると氏は信じている。結果、自宅、職場、買い物が一つの建物でできる統合的建築が今後の目玉となるであろうと予測している。そういった建物は交通ニーズを削減し、公害を減らすであろう。

Q7) DBB人―中核的価値

DBB人は、献身、規律、強い絆、責任、革命という中核的価値を有している。これは、「極上の卓越性」という彼らのビジョンに当てはまる。

革命について詳しく言うと、DB&Bは仕事現場に完全監視を導入している唯一の会社である。新型コロナウィルス発生以前から行っており、クライエントは、自分のコンピューターで現場の進展状況を監視することが出来る。一方、自動化技術をどのように利用できるかについても検討している。電気自動車やAIもまた刺激的な技術進歩であるとBilly氏はさらに強調した。

Billy氏は、競合他社との差別化を図る為に革命に投資をすべきと強く提唱している。

責任についていうと、Billy氏は従業員が失敗をしそこから学ぶということに信念を置いている。これが、特に若い人材の「育成」という概念につながる。DB&Bは、新世代の育成と訓練を制度化しているのだ。

Q8) シンガポールに投資を検討している日系企業へのメッセージ

既に、シンガポールに事業拡大を成し遂げた日系企業は多く存在する。従って、これからのメッセージは日系中小企業に向けたものだ。

変化は至る所にあるので、その変化を受けいれる事が致命的となる。他国の異文化を受け入れ、自身の専門知識とノウハウを保ち、他の国々へ機会が与えられるようにすることが重要であるとBilly氏は強調した。

日系中小企業が日本で数年前に起業をした時と同じ起業家精神をさらなる事業拡大へ注ぐべきである。

シンガポールは良い結果を導くような環境(歓迎的な政府、包括的支援制度、有意性のある法人税、安全な生活環境等)が整っており、近隣諸国に拡大する前の素晴らしい出発点となる為、Billy氏は日系企業のシンガポール進出を奨励する。

即行動、一刻も無駄にしない!

Q9) 自身の事業の今後の計画は?

会社の拡大計画は常にある。しかし拡大は機会と需要が手と手を取り合っていかなければならない。こういった要素なくして、拡大はしてはならない。

DB&Bのクライエントは多国籍企業で、インド、インドネシア、日本へ進出するようによく言われる。日本への進出に大変興味を示しており、今後国がもっと開けたら間違いなく進出するとBilly氏は述べた。

DB&Bは過去24年間、様々な危機を乗り越えてきた。そして業界の中で、新型コロナウィルスに最初に対処した企業であると自負している。

Q10) Billy氏の退職プランは?

Billy氏はまだまだ退職する予定はなく今も健在である。しかし、自身が身を引き、若い世代に席を譲り、革命を起こすこと、そして会社を新しいレベルに持っていくのにふさわしい時期を知ることが重要である。そうはいっても、常に手引きや知恵を与えられる存在であり続けると氏は言う。

Q11) 会社を一言で表すと?

Jeanette氏は「 回復力」と答えた。DB&Bは過去数年間色々な困難を経験しており、難題を乗り越える度に強くなり続けている。

勤労年数の長い素晴らしい従業員に恵まれており、新型コロナウィルス後も一層強くなれると自負している。

Q12) 若い世代へのアドバイス

Billy氏の若い世代へのアドバイスは、夢を追求する勇気を持つこと、大胆に困難に立ち向かうことである。困難に立ち向かうことは、知恵を得て、キャリアを形成する為の過程である。

同様に重要なのが、「思いっきり遊ぶ」ことである。

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