シンガポールのPWM, Progressive Wage Model(漸進的賃金モデル)とは?各業界に与える影響を解説

日本人がシンガポールで就労する為には就労ビザ(EP/Sパス)が必要です。

シンガポールで1,000件以上の就労ビザコンサルティングで培ったEP/Sパス取得ノウハウを共有させて頂いております。

日本人がシンガポールに旅行に来る場合、事前のビザ申請は必要なく、有効期間が滞在予定日数+6か月のパスポートを保有していれば入国時に30日間の滞在ビザが付与されます。 一方で、日本人が当地で働くためには、就労ビザの取得が必須になります。

この記事では、昨今シンガポールにおけるトピックとなっている、、PWM, Progressive Wage Model(漸進的賃金モデル)を見ていきたいと思います。

弊社は、シンガポールにおいて日系企業で唯一、就労ビザの申請代行ライセンスと、EPの申請について必須手続である学歴証明の第三者認証機関のライセンスを政府機関より付与されており、当地の日系企業で最も人材開発省(Ministry of Manpower、以下、「MOM」といいます)と頻繁にやり取りをしております。また、就労ビザについては、1,000件を超える申請を支援しており、これまでのところ全ての申請が許可されています。これらの知識や実務経験を基に、最新の動向や今後起こり得る改正についてファクトベースで解説をさせていただきます。


Global Gateway Advisors (GGA)のライセンスと実績

MOM発給の就労ビザの申請代行ライセンス番号:23S2040

MOM選定の認定学歴認証機関:https://www.mom.gov.sg/faq/work-pass-general/what-are-the-requirements-for-a-verification-proof



PWMとは

PWM, Progressive Wage Model(漸進的賃金モデル)とは、フルタイムおよびパートタイムの両方を含む、シンガポール国籍および永住権を有する従業員(ローカル従業員)の教育研修の実施と賃金の上昇を併せて義務づけ、労働生産性の向上を目指す制度をいいます。

=簡潔にいえば、低賃金労働者の賃金や待遇等の保護政策です。


Source - MOM/ Progressive Wage Model

https://www.mom.gov.sg/employment-practices/progressive-wage-model?utm_source=edm&utm_medium=infographic&utm_campaign=pwmwrfy23&utm_term=web&utm_content=pwm

そして、企業にとって非常に重要な点である、外国人の就労ビザに与える影響を以下にまとめます。

OEDとは

OED(Occ​upational Employment Dataset)は2019年より開始された、主にワーカーに関する以下2点を目的として、原則としてすべての企業が毎月アップデートする必要があります。

外国人労働者を雇用する企業は、既存の労働ビザの更新または新規労働ビザの申請を行うために、PWMの対象となるローカル従業員(シンガポール人とPR)についてはPWMの要件を、その他のすべてのローカル従業員についてはLQSの要件を遵守しなければならない、とされています。

OEDの申告は、ポータルからダウンロード可能な添付エクセルファイルに必要事項を記入して、OEDポータルにアップロードすれば完了します。

Source - MOM/ How will MOM collect information on the salaries, occupations and working hours of my local workers?:

https://www.mom.gov.sg/faq/progressive-wage-model/how-will-mom-collect-information-on-the-salaries-occupations-and-working-hours-of-my-local-workers

Source - MOM/Occupational Employment Dataset FAQ: https://stats.mom.gov.sg/Pages/OED-FAQ.aspx

Source - MOM/ OED Portal: https://stats.mom.gov.sg/laboursurvey/0Bn9VrkyUSUIttash5fgI5gAbBsfXwrIIlDbaQhFs_g%28*/!STANDARD

Source - MOM/ OED Guide: https://stats.mom.gov.sg/iMAS_MSOL/OED_Guide.pdf

なぜOEDやPWMが盛り上がっているのか?

これまで「清掃・警備・造園のみ」であったPWMが、シンガポール予算案2022で「小売・飲食・廃棄物処理・社内清掃員・社内警備員」にも適用拡大が発表されました。

この背景には、第1政党PAPとして、低賃金労働者であってもシンガポール人は選挙権を持つ国民であり、彼らをケアしないと、政党の支持とひいては国の存続に関わるといった点から、「外国人従業員に対する就労ビザの厳格化」に加えて、「シンガポール人/PR低賃金労働者の待遇改善」に人事政策を傾けました。

同時にProgressive Wage Mark, PW Markという制度も始まり、PW Markを取得している、かつ、2023年3月1日以降、政府との契約を締結した企業は、政府調達の要件を満たすこととされています。

このため特に、「清掃・警備・造園・小売・飲食・廃棄物処理」といった業種で、政府調達が主たる売上となっている会社は、PW Markの取得は必須となります。

例えば政府施設の「清掃」に関する政府調達があった場合に、PW Markを取得している企業が優先的に(もしくは排他的に)選ばれるようになることになります。

誰がPWMを取得すべきなのか?

PW Markについては、より多くのシンガポール人/PRの低賃金労働者を抱えている特定の業種については取得が強く推奨されておりますが、Sectoral PWs ※3とOccupational PWs※4に当てはまる労働者を雇用していない企業については、PW Markの取得は現時点では出来ないこととになります。 

※3 Sectoral PWs:Cleaning sector, Security sector, Landscape sector , Lift and escalator maintenance sector, Retail sector , Food services sector,  Waste management sector

※4 Occupational PWs:Administrators , Drivers

Source - MOM/ Progressive Wage Mark: https://www.mom.gov.sg/employment-practices/progressive-wage-model/progressive-wage-mark

Source - MOM/ Can I get the PW Mark even if I don’t hire any workers under Sectoral PW or Occupational PW?: https://www.mom.gov.sg/faq/progressive-wage-model/can-i-get-the-pw-mark-even-if-i-dont-hire-any-workers-under-sectoral-pw-or-occupational-pw

Source - MOM/ Expansion of Progressive Wage approach and coverage: https://www.mom.gov.sg/employment-practices/progressive-wage-model/expansion-of-progressive-wage-approach-and-coverage

Source - MOM/ Occupational Progressive Wages for administrators and drivers: https://www.mom.gov.sg/employment-practices/progressive-wage-model/occupational-pws-for-administrators-and-drivers

 

これに加えて、PW Markの上位概念として、TAFEPのTripartite Standardsにて Advancing Well-Being of Lower-Wage Workers (TS-LWW)が、2023年3月より加わりました。

PW Markの取得が強く推奨される企業の場合は、PW Markを取得し、TS-LWWを取得することで、PW Mark Plusと位置づけられます。

PW Markの取得対象にならない企業の場合は、PW Markを取得できず、希望であれば、TS-LWWを取得することになります。

 

なお、Occupational PWs ※4については、「2023年3月1日」よりスタートしており、特に「Administrators」については総務、秘書、経理、財務、人事といった「バックオフィス全般」に適用されます。

 

Source - TAFEP/ Advancing Well-Being of Lower-Wage Workers: https://www.tal.sg/tafep/getting-started/progressive/tripartite-standards#lower-wage-workers

Source - TAFEP/ Tripartite Workgroup on Lower-age workers Report: https://www.mom.gov.sg/-/media/mom/documents/employment-practices/lww/tripartite-workgroup-on-lower-wage-workers-report.pdf

 

LQSとは

LQS, Local Qualifying Salary (最低適格給与)とは、Work PermitやS Passの発給に必要なローカル従業員数(Quota)を計算する際に用いられる給与であり、現行(2024年7月1日以降)では月額S$1,600以上で1名、S$800以上で0.5名のローカルを雇用していることとなります。。

Source - MOM/Local Qualifying Salary: https://www.mom.gov.sg/employment-practices/progressive-wage-model/local-qualifying-salary

Source - MOM/What is the Local Qualifying Salary (LQS)?: https://www.mom.gov.sg/faq/work-pass-general/what-is-the-local-qualifying-salary

 

(注)上記記述は、その内容を弊社が保証するものではありません。
詳細、最新情報は弊社までお問い合わせください。

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