自動車・モビリティ

東南アジアの自動車市場は、急速な都市化と経済成長に伴い、MaaS（Mobility as a Service）の成長、そして電気自動車（EV）の普及など、多岐にわたる要因によって大きな変革を迎えています。

東南アジアにおける自動車販売の変動

東南アジアの自動車販売市場は、2023年に大きな変動を見せています。マレーシアがタイを抜いて2位に浮上し、フィリピンもベトナムを追い越して4位となりました。この順位変動の背景には、各国の経済政策や市場環境の違いが影響しています。特に、金利上昇によるマイナス影響を税優遇などで緩和できたかどうかが、各国の明暗を分けた要因となっています。一方で、電気自動車（EV）の販売はタイを中心に地域全体で増加傾向にあり、環境に配慮した車両への需要が高まっていることがうかがえます。しかし、2024年の見通しについては、インドネシア、マレーシア、ベトナムでのコロナ禍以降の減税措置の打ち切りや、車両価格の引き上げ、金利上昇などの要因により、330〜340万台とほぼ横ばいか微減が予想されています。

スーパーアプリの台頭

Grabは東南アジアを代表するスーパーアプリとして、8カ国500以上の都市で展開しています。2012年にマレーシアで配車サービスとして始まったGrabは、現在では配車だけでなく、フードデリバリー、宅配、デジタル決済など多様なサービスを提供しています。特に、シンガポール、マレーシア、インドネシアが主要な収益源となっており、3500万人以上の月間アクティブユーザーを抱えています。Grabは地域特性に合わせたハイパーローカル戦略を採用し、2018年にはUberの東南アジア事業を買収するなど、急速に成長を遂げました。また、観光客向けに多言語対応や通貨換算機能を導入するなど、東南アジアの経済発展と観光産業の回復に貢献しています。

MaaSの成長要因と課題

MaaS（Mobility as a Service）市場は、デジタル技術の進歩と持続可能な交通ソリューションへの需要増加により急速に成長しています。主な成長要因には、スマートフォンの普及、デジタル決済の拡大、政府のスマートシティ構想支援などが挙げられます。一方で、MaaSの発展には課題も存在します。公共交通インフラの未整備、多様な交通手段のデータ統合の困難さ、規制環境の複雑さなどが障壁となっています。また、プライバシーの懸念や、従来の交通事業者との利害対立も課題となっています。MaaSの持続可能な成長には、これらの課題を克服し、ユーザーニーズに合わせた革新的なソリューションの開発が不可欠です。