ホスピタリティ・サービス
（旅行、ホテル、レストラン、フードサービス、リゾート）

東南アジアのホスピタリティ・サービス業界は、豊かな文化と自然の魅力を活かし、高級リゾートから地元の味を楽しめるレストランまで、多様な体験を提供しています。この地域では、伝統的なおもてなしの精神と現代的な設備が融合し、世界中の旅行者を魅了する独特の魅力を生み出しています。

観光収入の推移

東南アジアの観光業は、地域経済において重要な役割を果たしています。2019年時点で、ASEANの観光産業のGDPに占める割合は11.8％であり、世界平均の10.4％を上回っていました。特にフィリピン（22.5％）、タイ（20.3％）、マレーシア（11.7％）では、観光業のGDP寄与率が高くなっています。2015年には、ASEANの観光収入は1,080億ドルに達し、世界全体の8.6％を占めていました。しかし、新型コロナウイルスの影響により、2020年には観光収入が2019年比で80％減少し、2021年には95％減少するなど、大きな打撃を受けました。現在、各国は入国規制の緩和を進め、観光産業の回復を目指しています。世界観光機関（UNWTO）の予測によれば、2030年までにASEANへの外国人観光客数は約1億9,000万人に達し、世界全体の10％を超えると見込まれています。

カジノ産業の発展

東南アジアのカジノ産業は、近年急速に発展しており、地域の経済に重要な役割を果たしています。特にシンガポールやマカオなどの国々では、統合型リゾート（IR）の一部としてカジノが合法化され、観光客を引き付ける主要な要因となっています。例えば、シンガポールでは2010年に初めてカジノが合法化され、マリーナベイサンズとリゾートワールドセントーサの2つのIRで運営されています。一方、カンボジアの首都プノンペンにも大規模なカジノクラブが存在し、観光客の関心を集めています。東南アジアのカジノ市場は、COVID-19パンデミックの影響から回復しつつあり、渡航制限の緩和に伴い、今後さらなる成長が期待されています。

エコツーリズムの課題

バリ島では、エコツーリズムが環境保護と経済発展の両立を目指す重要な取り組みとして注目されています。持続可能な村落観光や国立公園の活用など、様々な形態のエコツアーが展開されていますが、その実態には課題も存在します。例えば、北部バリでは自然や文化を維持しながら観光の悪影響を減少させる戦略が模索されています。一方で、海洋プラスチック問題や観光に伴う環境汚染の深刻化に対し、エコホテルやグリーンスクールなどの持続可能な取り組みも行われています。ユネスコ世界遺産に指定されているテガラランの棚田を巡る電動自転車ツアーなど、環境に配慮しつつ地域の魅力を体験できるエコツアーも人気を集めています。