製造

東南アジアの製造業は、近年の経済成長と共に急速な発展を遂げているが、輸出低迷や人材育成の課題に直面しています。2024年には輸出と製造業の持ち直しが期待される一方で、各国の成長ペースや産業構造の違いにより、その回復の度合いは異なると予測されています。

東南アジア製造業の展開

東南アジアでの製造業は、国によって発展段階が異なり、多様な様相を呈しています。タイとマレーシアは工業化の完成度が高く、自動車や電気・電子産業を中心に発展を遂げています。一方、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどは、労働コストの低さを活かした労働集約的な製造業が主流となっています。日系企業は、これらの国々の特性を活かした進出戦略を展開しており、2016年時点でASEANに進出している日本企業は11,328社に上り、そのうち製造業が4,925社と最多を占めています。しかし、人材育成や技能伝承の課題も存在し、各企業は現地の状況に応じた人材育成策を講じています。今後は、ASEANの人口増加と経済統合の進展により、製造業のさらなる成長が期待されます。

製造業の給与水準の変化

製造業の給与水準は近年、複雑な変化を示しています。アジアの製造業では、過去10年間で給与水準が大幅に上昇したが、都市間の格差も拡大しています。一方、日本では産業全体の平均賃金が24年間で3.4%上昇したものの、個別賃金はマイナス5.3%となっており、業種や企業規模によって大きな差が見られます。特に、大企業では35〜54歳の中堅社員の賃金が減少傾向にある一方、若手社員の給与は増加しており、世代間での賃金配分に変化が生じています。また、非正規労働者の増加が平均賃金を押し下げる要因となっており、特に製造業では非正規労働者の平均賃金が前年比13.9%減少したことが報告されています。これらの変化は、労働市場の構造変化や企業の人材戦略の転換を反映しています。

日本にとっての東南アジア

日本企業にとって東南アジアは、過去30年間にわたり製造業の重要な生産拠点として位置づけられてきました。しかし近年、この関係は大きく変化しています。多くの日本企業は、東南アジアを単なる生産拠点から、成長する消費市場としても捉えるようになっています。この変化は、東南アジアの経済成長に伴う中間層の拡大が背景にあります。日系製造業は、現地の消費者ニーズを把握し、東南アジア特有の流通事情を理解するために、経営の現地化や現地人材の育成に注力しています。同時に、東南アジアで蓄積した知見やノウハウを他の地域に横展開する取り組みも行われており、これらの戦略は日本企業の競争力強化に寄与しています。